持って帰れるアイドル
2000年3月 公開
お金で買って持って帰れる自分だけのアイドル。
作ったら売れると思いませんか。
PS2でなら、出来ると思うな。
例えば新しいゲームの開発ということを考えた時に、
あらゆる部分でレベルの高いものを、
と望むのは無理がある。まあとにかく、
お金が掛るということですね。
見た目が良くて、バトルが面白くて、発展性があって、
インターフェイスが気持ちよくて、などなど、
求められる要素は沢山あるし、そういったものを
兼ね備えていた方が良いのは当然ではあるのだが、
なかなかそうもいかない。
全ての面で満足の行くソフトを作ろうとしても、
既に計画の段階で無理があることが分かってしまう、
悲しいね。ならば、多くは望まず、
ただ一点で強力にユーザーの心を
惹きつけるソフトを作ってはどうだろう。
他の追随を許さない、圧倒的な訴求力を
実現することができれば、
成功のチャンスがあるかも知れない。
そこで僕の考えるポイントというのが、
ゲーム機の中に本物の女の子を再現するというもの。
今まで、数多くのポリゴンの女の子、
いわゆるバーチャルアイドルというものが
作られ、流布されてきたけど、ひとつとして
満足のいくものに出会った試しがない。
そういったものの欠点や、制作上の問題は
またの機会に書くとして、つまり、ああこれは
可愛いなと感じ、ドキドキしたことが一度もない。
だが、出来ないはずはないと思うのだ。
やり方次第で、本当にそこに存在するかのような、
魅力的な女の子が。
まず大事なのは
「バーチャルでない実物の女の子を用意する」こと。
簡単な話で、実物の女の子を可愛く
作り上げられないようでは、
ポリゴンの女の子を魅力的につくるなど、
無理なのである。最初に、どこからでもいい、
可愛い女の子を連れてくる。
これがまず第一歩。
そしてその女の子を、服装から化粧から、
可愛く作り上げる。ライティングや見せ方を含めて、
完璧なものが出来たら、それを丁寧に取り込むのである。
つまりは、デジタイズしてコンピューターに再現する。
顔や身体をレーザーでスキャンして、モデルデータを作り、
テクスチャーも写真から起こす。
そのモデルに、自然な動きが可能なように関節を入れ、
それをモーションキャプチャーデータで動かす。
モーションキャプチャーは、作為的な要素を
排するように作ること。
つまり、芝居はいっさい無しで、
自然なものが取れるまでひたすら粘る。
会話のシーンをキャプチャーするとすれば、
その状況を完全に再現して、
女の子が本来持っている魅力を引き出すことに徹底する。
勿論、会話は同時録音で、シナリオも無し。
とにかく、データ(素材)を集めるまでの段階に
手間と時間をかけ、
後で手を加える必要がない段階にまで高めておく。
何人も作らなくてもいい。いっそ、一人でもいいと思う。
完璧なものができれば、それは凄い魅力を持つはずだ。
ゲームの内容は、その女の子と会話をすることに尽きる。
考えてみて欲しい。普通の人生の中で、
アイドル並みに可愛い女の子と2人きりで、
会話をするチャンスなんてあるだろうか。
ありませんよ、そんなもの。
それも、女の子が真摯にこちらの眼を見て
喋ってくれるなんてね。
単純にシステムを想像しても、
いろいろな仕掛けが思い付く。
こちらが女の子のどこを見ているかによって
女の子の反応が変わる。
あるいは女の子を見ないで会話をすると、彼女が怒りだす。
会話というものが本来持っている
リアルタイムならではのスリリングさ。
こちらの台詞は何パターンかの選択肢になっているにせよ、
それをプレーヤーの音声入力で選べるように
してはどうだろう。きっと、実際に会話を
している感覚が増すに違いない。
ドラマ部分を作り込む事を考えても、
仕組みそのものは極めて簡単だから、
8ヶ月くらいで出来る気がする。
予算はまあ\100,000,000-ぐらい。
これ、いいと思うなあ。
もし売ってたら僕は買うなあ。(笑)

菊田裕樹(Hiroki Kikuta) 1962年愛知県生。関西大学文学部哲学卒。漫画家を経て1991年にコンシューマゲーム開発会社であるスクウェアに入社。ゲーム音楽の作曲家として、「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」「双界儀」などの制作に携わる。1997年株式会社サクノスを立ち上げ独立、ホラーRPG「クーデルカ」を制作。以後、フリーに。ゲームプロデューサー、ディレクター、シナリオライター、オンラインゲーム設計など、経歴多数。現在は再びゲーム音楽のフィールドを中心に仕事をする毎日。最近作は2010年末にセガより発売されたPSP向けRPG「シャイニング・ハーツ」。